地図を見ながら思うこと

何もしたくない時、私は地図を見る。世界地図、そして日本地図。世界地図を見ながら今迄の70年の人生で歩いた世界の国々を思い出の中で訪ねる。青年時代に訪れた国々。

サラリーマンになって出張した国々。そして駐在したマレーシア。まだ行ったことのない国々を地図の上で見て、想いを馳せる。次は日本地図。友人が住んでいる都市を地図の上で訪ねる。今頃どうしているかな。暫く思い出に沈む。

人の人生とは地図の上を実際に歩くことかもしれない。ある人は多くの国々を訪問し、また日本国内もあちらこちらと数多く訪ねていることだろう。

そんなことを思っているうちに、気がついたことがある。私は自分の中にいくつかの街を持っている、と。それが自分が子どもの頃の街だったり、行ったことのない江戸時代の街並みだったり。本の地図は空間的だが、私の心の中の地図は時間的でもある。

地図を見た後、私は眠りにつく。今晩はリスボンの酒場を歩きながらファドを聴いているだろうか。