地産地消の経済学

地産地消は単なる経済活動ではなく、地域が自立するための運動と今治市の安井氏は講演で述べたおられた。経済活動としては地元で学校給食用の小麦を生産すれば、その代金は確かに地元の農家に落ちる。輸入の小麦を使ったパンであれば、その代金は例えば商社を通じてアメリカの農家に渡ることになるだろう。輸入した方が価格が安いということで、価格だけが絶対基準になるような経済の仕組みでは地産地消は進みにくいのではないだろうか。その意味では顧客にとっての顧客価値を明確にする必要があるが、一方で顧客に対して必要情報を適切に伝え、理解してもらい、共有していく努力も重要だ。地産地消という言葉を聞くと、私は江戸時代のことを考える。約400の藩があった。大半は1~5万石の小藩だ。十割自治という原則で、各藩は規模の大小を問わず、自分達で生きていかなければならなかった。いわば江戸時代は400の藩で地産地消が行なわれていた。藩の財政をまかない、自立を続けていくためにも殖産事業、人材の育成が最重要課題となり、それぞれの藩は領主から農業者、工人、そして商人も含めて自立のために必死の努力を傾け続けたのではないか。その結果生まれた農産物、工芸品、文化が現在にも引き継がれている。日本型地産地消の今後の進め方を研究するために、温故知新で江戸時代の幕藩体制下の各藩の地産地消運動から何か学べることがあるはずだ。キーワードは「自立」。