外交戦略と戦略家、そして国民の心構えについて

米国の伝説の戦略家、アンドリュー・マーシャル氏が来年1月にも引退するとの噂が広がっていることを日本経済新聞11月16日の朝刊が伝えている。マーシャル氏は93歳で現役の官僚として米国防省のネットアセスメントの局長を務めている。日本政府はマーシャル氏との交流を秘かに続けてきた。さてマーシャル氏の近年の関心事は今後中国がどのように動くか、だった。彼の特徴は反中や親中という先入観を排して、科学的に中国を調べ上げることにあった。私がマーシャル氏に関心を持つのは2つの理由からによる。

1.現在のようなグローバル時代は経済戦略と同じように、いやそれ以上に外交戦略がモノを言う。私達日本人は感情に走りやすいという傾向を持っているが、国民一人一人が事実に基づいた冷静な国際感覚を磨くことが今ほど求められている時代はないのではないか。これは私にとっても自戒の言葉でもある。国際外交の冷徹さ、したたかさを私達国民も理解する必要がある。

2.もう一つは超長期戦略を描くマーシャル氏は今後の世界をどのように見ているだろうか、ということである。中国がいずれ大国になるとは大方の見るところではあったが、

これほど急速に大国化するとは氏も予想していなかったのではないか。逆の視点から見れば早すぎた成長の裏では大きな歪みがコントロールできないほどに構造化していると言えるかもしれない。米ソ冷戦時代から米・ロ、米中緊張時代。米国の超長期戦略家とロシアの超長期戦略家、中国の超長期戦略家が世界を舞台に対峙する時代だ。ところで日本の超長期戦略家はどこにいるのだろうか。政府の中か、大学の中か、あるいは在野の研究家か。あるいは・・・。