夜の散歩

 

ここ2日間、夕食後散歩をしている。なぜか気持が鬱積して晴れない。秋の夜風に吹かれながら、道を歩く。風が気持いい。ゴルフ練習場の横を通りすぎると畑がひろがっている。単管パイプのフェンスに寄りかかり、空を見る。あちらにもこちらにも星が煌いている。大空と星を見ていると少しづつ胸が晴れていくのを感じる。歩き始める。道路の向こう側にある2階建てアパートの階段を男性が上がっていき、2階の真ん中のドアを開け、電気をつけて部屋に入っていくのが見える。大きな通りにでた。ユリノキ通り。高さが10メートル前後のユリノキの並木道。少し歩き疲れたので、縁石に腰掛け、道路の向こう側の大きなユリノキを見る。台風の影響だろうか、強い風の中、ユリノキはまるで踊るように葉を激しく揺らしている。左の空に飛行機の赤いランプが見える。一度ユリノキに隠れ、そして出てきた。右の空には三日月が雲に半分隠れながら、朧に光っている。飛行機はまるで月に向かうかのように飛んでいる。私は目を閉じて、いろいろな音に耳を澄ませた。車の走る音、葉が風に揉みしだかれ翻る音、前を通る人の足音、どこかで人が叫んでいる声がかすかに聞こえる。そしてユリノキが私に話しかける。「私はいつもここに立っている。朝日の光の中でも、暗い夜の中でも、一日中、一年中、そして私の命の尽きる迄、私は立ち続けている。」私はまた腰を上げて歩き始める。