夜の時間

 一日の仕事を終えて、疲れて帰宅する。夕食をとって、家族と話をして、テレビを見て、風呂に入り、それから布団の上に身体を横たえ、寝る。以前はそんなパターンだったが、思うところがあって確か2年前からだと記憶しているが、毎日日記を書くようにした。どんな一日を送ったのか、どんなことを考え、どんな気持で過ごしたのか、記録しておきたいと思った。日記を書きながら、気がつくことがある。言うべきことを、相手に通じる言葉で言わず、言わなくてもよいことを言ってしまった後悔に沈むこともある。物事を、日記を書きながら、もう少し深く、広く考える機会に恵まれることもある。日記を書き終わって一日が終る。窓を開け暗い夜空を見上げる。ある本を読んでいたら、こんな文章に出合った。「もはや、われわれは、本当の意味の夜を知らないということになってくるわけです。夜には2つの面があります。夜は、一方で暗黒の時であり、人間が不安になるときです。・・・夜は不安な時であるとともに、超越的なものへと心が開かれる時なのです。」私自身は、以前は夜が余り好きではなかった。しかし最近はやっと夜の時間を楽しむことができるようになった。いろいろなことを思い巡らしたり、好きな音楽を聴いたり、ただぼんやりしたり。それは自分と向き合う時間とも言える。その時、時間はゆっくり流れ、ある時はタイムスリップしたりする。やっと夜の時間との付き合い方が分かってきたのかもしれない。そして夜の時間に、最近私はいろいろな人のことを思い出すことが多くなった。それは死者との対話の時でもあるらしい。