実行することの難しさ

仕事の分野で実行することの難しさについて考えている。やってみたいと思っていることとそれを実行することの間には大きな隔たりがある。つまり、人はやってみたいと思っていてもなかなかその思いを実行しない。誰かが実際にやっているのを見ると「自分も同じことを考えていた」などど言う。私もそうだ。以前読んだ本の中で、実際に実行する人は100人のうち3人しかいない。要するに殆どの人が実行しない、ということである。このような事態をどのように考えたら良いのだろうか。なぜ実行しないのか。まず最初に考えられることは「思ったようにはうまくいかないのではないか」という失敗に対する恐れだろう。「失敗したら責任問題にもなるだろうし、金銭的損失も出る」。かつて自分が思ったことを実行して失敗したことをフラッシュバックのように思い出す、ということもあるだろう。「また失敗するのではないか」そんな気持が頭をよぎるかもしれない。人は失敗した時、その失敗の本質をしっかり見極めるということが出来ないようだ。表面的な説明を自分にして、早く失敗の現場から離れたいと思い、そして同じ失敗を繰り返す。次に考えられるケースは、「実行に移すには時期尚早だ。まだ条件が揃っていないし、機も熟していない」。これは説得力のある説明だが、条件がどの程度揃ったら実行に移すのか、そのあたりで決意のレベルが分かる。なぜなら条件が100%揃ってからビジネスを始めるというのは理想論で、恐らく70%必要条件が揃ったと判断できるなら実行に踏み切るべきだろう。一方時流の見極めも重要だ。ビジネスで成功するためには時流に乗ることが大切だ。

仕事の目的はまず人々と社会のニーズを満たすというところにあるが、未来を先取りするというイノベーション的な部分もある。特に後者がこれからのビジネスではますます必要になってくるはずだ。三番目になぜ実行しないのか。「利益が間違いなく上がるかどうか、はっきりしない。また順調に仕事が成長していくか自信が持てない」これはビジネスを展開していく上で、一番重要なところだ。そのためには事業理念を固め、事業計画をつくり、実行していくためのパートナーを確保し、チームさらには組織を編成していく。この経営にとっての基本的な準備作業の中で疎かになりがちなのが、「どのようにして利益を上げるか」という部分だ。「ザ・プロフィット」を書いたスライウツキーが指摘しているように、「『利益がどこで、どのように発生しているか』という問いを徹底的に考え抜くことが極めて重要」なのだが、それをしていないという自信欠如、そして「企業がどこで利益を上げられるのかを決めるのは顧客である」ということが分かっていても、自社にとって最も重要な「顧客」がどこにいるか、見えていないという不安が付きまとっている限り、人はビジネスの実行に踏み切ることができない。

起業の多いアメリカでビジネスモデルという発想が生まれてきたのは、理由のないことではない。