小嶋さんと小林さん

 

現在私の手元に小嶋さんの「あしあと」と清水 雅氏が書いた「小林 一三翁に教えられるもの」(昭和32年7月3日 初版)がある。この2冊の本から教えられることは人を育て、社会的意義のある仕事をするということである。清水氏はこう書いている。「私が最も感銘を覚えたことは、ただ商品の売買をするということ以外に、自分の仕事の中に、何かしら一つの意義を持っている仕事をすることが、如何に尊いものであるかということで・・・・百貨店事業に従事するものは、出来る得る限り社会的意義のある仕事を、多数作り上げることが最も必要であり、また義務であると考え始めたのである。・・・小林さんの頭の中を去来する考え方には、常に社会大衆のために、社会的の意義ある仕事を完成させようとせられる点」。昨年11月のうめだ本店の建て替えにあたり阪急が打ち出したコンセプトに私は小林翁の精神を感じている。小林翁は阪急らしさを継承発展させる人材を育てていたのだ。一方現在のイオングループは、前身はジャスコであった。私が1980年代前半マレーシアのクアラルンプールに駐在していた時、ジャスコがぺタリンジャヤに進出していた。その時は中堅スーパーマーケットだった。その後ヤオハンが出展して、確かジャスコはあまり目立つスーパーではなかったように思う。ただ私はジャスコの「連邦経営」には独自性を感じていた。それが現在ではニチイを買収し、現在ではダイエーの筆頭株主となり、巨大なイオングループを形成している。小嶋さんは1997年当時、「もう一新規度やり直しをしなければならない時期にきている」と述べておられた。虚構性を排し、常に真実が必要であると説き続けたジャスコの小嶋さんに鍛えられた人々が、この新規やり直しを成し遂げ、今日のイオングループを築きあげたのではないか。企業を発展させる人材を育て、社会的にも意義のある仕事をする・・・ビジネスモデルをデザインするための欠かすことの出来ない土台に改めて目を向けたい。