屋上菜園と状況判断力

農作業では状況判断力が求められる。野菜の生長は日々変化していく。昨日迄順調だったのが今日は急に元気がなくなったり、病虫害が出ていたりする。従い良いことでも悪いことでも何が変化しているのか、また何か問題が起きていないか、瞬時に判断する力が必要となる。特に自然相手の状況判断は簡単ではない。私が若い頃から繰り返し読んでいる加藤昭吉著「状況判断学のすすめ」(1977年発行 講談社)では、大きな動きに対処する大才、「不確かなもの」に対処する感覚や経験的知恵の重要性を説いている。その上で加藤氏は次のように言う。「生きた全体を一つの全体として把握するためにわれわれはもっと感性による瞬間的な理解を大切にする必要がある」。私は朝霞農園にしても、都心のビルの屋上の菜園にしても、現場について全体を見た時の印象を大事にしている。その後で畑の周りを歩きながらそれぞれの区画を見て回る。自分なりに状況判断をした上で、今日は何をするか、決める、つまり意思決定をする。屋上菜園に着くといきなり作業を始める人がいるが、まず全体的判断、意思決定、その上で個々の具体的作業となる。今現在農園の状態はどのようなものか、今後起きそうな事柄は何か、洞察することが大事だ。一方ビッグデータは膨大な情報を集め、人工知能も活用して、データの編集を行なう。ところで全体観、洞察力はやはり人間が行なうべきものだろう。なぜなら感性の力、具体的直観・洞察は人間独自のものだから。