師匠と弟子・能の世界から
NHKのEテレの古典芸能の番組で若い能楽師が「道成寺」を舞うのを見た。厳しい稽古をして晴れ舞台で無事シテを舞いきった。塩津圭介さんだ。舞い終わった後「お能はつくづくむずかしいと思いました」とホッとしながらも次に向って課題も見つけたような口振りだった。父君は塩津哲生氏。子供の頃稽古をつけてもらっている時、「この人は誰だろう」と思ったほど厳しかったようだ。圭介さんが「道成寺」を無事舞い終えた後、哲生氏はこんなことを言っていた。
「段々体がいうことをきかなくなって、そうなると余計に能への思いが強くなって、今、正直自分で苦しんでいる時なんですけど・・・(中略)・・・動かなくなった体から長年の執念みたいなものが出てくる。そういう世界があるように思う」
私の哲生氏と同じ年齢ということもあり、なにか分るような気がする。私の中にも「執念」のようなものがある。
能の世界は「毎日稽古 生涯修業」と言われている。
私の場合は「毎日・アイデア稽古 残された生涯・社会の役に立つ仕事修業」ということになるだろうか。