平田雅彦と石田梅岩

今月の「歴史街道」は黒田官兵衛の総力特集で、官兵衛の軍師としての活躍を取り上げている。その中で秋月達郎氏の記事が特に印象に残った。官兵衛にとって竹中半兵衛との出会いが大きな意味を持っていたことをうかがわせる内容だ。さて2月号の一番最後の方で石田梅岩を取りあげている。筆者はパナソニック副社長などを歴任された平田雅彦氏だ。

タイトルは「何のために生きるのか? 石田梅岩が語る商売への誇り」現代人が再確認すべき倫理とは、との副題が付けられている。詳しくは歴史街道2月号をお読み頂きたいが、私がここで注目するのは以下2点だ。

1.平田氏は、梅岩は常に物事の原点に戻って考えて確信を掴んだと言う。商人の原点は何か。そもそも商人は何のために存在するのか。現在と異なり商人が蔑視された江戸時代、梅岩が商人の原点をここまで突き詰めて考えることができたのはなぜだろうか。そこには平田氏も言われるように人はいかに生きるのか、その問いを究めていく精神があったからではないかと思われます。さてこの精神はどのようにして培われていったのでしょうか。平田氏は、それは人生不遇の時であったと述べている。

2.梅岩の心学塾では商人道の精神が説かれたとのことだ。平田氏はそれを3項目にまとめている。1.お客様満足 2.持続可能性 3.共生。この3つはまさに現代にも適用できる原則と言って良いだろう。なぜ梅岩はここまで考え、到達できたのだろうか。梅岩は生産されたものを販売するためには「流通機能」が不可欠であり、健全な流通を実現するためには、商人には特に倫理性が求められることを実践の中で洞察していたにちがいない。ヨーロッパでは商人の倫理性はどのように考えられていたのだろうか。恐らくまず神に対する姿勢が最初に来たのではないか。鈴木正三といい、石田梅岩といい、日本人の倫理性の原点はどこにあるのだろうか。