廃墟を見て
人は願いを持って、あるいは理想に燃えて建物を建てる。しかし、その人が亡くなった後、建物は住む人、使う人がいなければ、生活感のない場所に変っていく。山の中に終の棲家を建てる人は終りの時が来る迄、本当に住みたい家に住む、ということでいいのだろう。私自身もそれほど遠くない時期に山の中の田舎の家で晩年を過ごしたいと思っている。その場合は新しく家を建てるのではなく、従来の民家に手を入れてできるだけそのまま使いたいと思う。廃墟のような立派な建物の横にトタン葺の民家がある。民家の下は傾斜面になっていて畑があり、棚田が3枚あり、その下には草地があった。草地の下は清流が流れている。その風景を見ながら、なぜか懐かしいような、心和むような気持になった。傾斜面には陽が良く当る。昇り降りの作業は大変だろうが、豊かな稔り、収穫があることだろう。