思いの共有化とビジネスモデル

 

思いの共有化、というのは日本型ビジネスモデルにとって欠かすことのできない重要な構成要件です。ここで思いの共有化とコンセンサスの違いについて触れておきたい。小笠原泰氏によるとコンセンサスとは「個々人に主張・意見があることを前提とした主張・意見の部分集合」つまり重なり合ったところ、ということになります。「相互独立的自己構造をもち、『考え・主張し・選ぶ』欧米人の重心は『コンセンサス』、一方相互協調的な自己構造をもち、『思い・共感し・あわせる』ことが自然である日本人の重心は『思いの共有化』になるとのことです。「思いの共有化」の構造は重なり合いではなく、個人個人の思いといういわば小さな円が「一段上の大きな思いの枠」に内包されるという形を取ります。日本的経営では経営トップはこの大きな思いの枠を提示することが求められます。社員は大きな枠の中で自分の思いを位置づけ直し、そこに自分の役割、目標を見出すという流れになります。大きな枠、舞台を設定するために経営トップは社員の気持、願いを把握し、全員を巻き込むような「一段上の大きな思いの枠」、ビジョンを打ち出します。ビジョンは社員の琴線に触れ、奮い立たせるようなものでなければなりません。かつてのモノづくり世界一の日本は「一段上の大きな思いの枠」を経営トップが打ち出すことによって成長エネルギーを引き出してきた、と言えるでしょう。現在経営トップにとっての大きな課題はこのような「一段上の大きな思いの枠」をグローバルな世界の動向も見据えながら打ち出さなければならない、というところにあります。目下私が取り組んでいる「日本型ビジネスモデル」は世界に直結する、ということを前提にしています。企業も政府もそれぞれ大小の組織もそこに属する人々の琴線に触れ、奮い立たせるような「思い」を打ち出してほしいと願うものです。内向き志向、外向き志向を弁証法的に乗り越えていくことが今日本人に期待されています。