提案から共創へ 共創からカスタマイズへ(1)

 

マーケティングの専門家のY氏と意見交換をした。以下はその内容である。

 

A 今マーケティングの世界では何が起こっているのでしょうか。

N お客様は、以前は商品とかサービスを買うことで満足感、漠然とした幸せ感を感じていましたが、今はそうではありません。自分にとっての確かな幸せ、納得できる豊かさを求めています。その基準はお客様自身が持っているもので、企業側にはありません。

A 価値基準もカスタマイズされている、ということですね。難しい時代になりました。

N そうですね。ということは販売する側には、お客様の価値基準を洞察し、共感し、その上で実現するための知恵とかノウハウを提供することが求められています。しかし間違ってほしくないのは、企業側が提供価値とか価値創造などと言って、結局は自社にとって都合の良い提案してしまうことです。

A 価値の押し付けをしてはならない、ということですね。

N 価値があるかどうか、それを決めるのはあくまでお客様です。

A ここで一つ質問させて頂いていいですか。お客様が感じる価値そして価値基準は実際どのようにして出来上がってきたものなのでしょうか。私自身の価値基準、あるいは価値感というものを考えてみると、一瞬そのような明確なものを持っているだろうかと考えてしまいます。何か、心の欲求に従って買っているような気もしますが・・・。

  勿論個々の商品毎に判断基準は異なります。農業資材を買う場合は安全性と耐久性、旅行で旅館などに泊まる場合は、アットホームで周囲を散歩できるかとか。

N 実際問題としてはそうかもしれません。それでもお客様は自分の価値基準、価値感はキチンと持っている、と私は考えています。その意味では販売する側の役割の一つは良いコミュニケーションを通じて、お客様が自分自身の価値基準、価値感を再認識して、「そうか、自分の価値感とはそういうものだった」と会話の中で気付くお手伝いをする、というところにあります。

A そういうことになりますと、販売する側のコミュニケーション能力が極めて重要になりますね。練達した能力ですね。

N コミュニケーション能力をどのようにして質的に高めていくか、今マーケティングの世界で注目されているポイントです。さてここから先は少し、難しい話になりますので、コーヒーブレークにしませんか。

  一息ついてから、またお話を続けましょう。