提案から共創へ 共創からカスタマイズへ(2)

 

N さてお話を続けていきましょう。先程Aさんが、自分は自分独自の価値基準、あるいは価値感を明確に意識していない、と言われましたが、これからの成熟経済・文化の

  時代は良い意味での自己主張が大切になってきます。ですからモノを買う時、サービスを受ける時、自分はなぜそれを買うのか、何を基準にして買うのか、自分は本当は何が欲しいのか、自問自答しながらはっきりさせていくことが大事なんです。少し飛躍しますが、欧米の男性が恰好いいのは自分の味を出しているからだと私は思っています。

A 欧米は個人主義の文化ですから、定食ではなく、カスタマイズされたその人だけの特別食ということでしょうか。古い話ですが、若い頃アメリカに出張して、ホテルのレストランでモーニングを注文した時、卵の焼き方、ベーコンの焼き具合、などどれにしますか、と聞かれた時、当惑したことを思い出しました。日本ではそこまで聞きませんよね。

N 確かにそうですね。私にも思い当ることがあります。日本の場合、基本は定食文化と言えそうですね。しかし最近は個人主義の影響でしょうか、私らしさ、が常に意識されるようになりました。ところがここでセンシティブな問題が出てきます。商品・サービスを販売する側が一人一人のお客様の心に内在する「私らしさ」のイメージと価値感にどのようにして辿りつくか、という問題ともう一つ。お客様は自分だけでは「私らしさ」の全体像がつかめない、ということがあります。

A お客様は自分だけでは「私らしさ」の全体像がつかめない、とはどういうことでしょうか。

N これは日本人の性格的特徴ですが、長所よりも欠点に目が行きやすい。消費行動の中で自分の欠点、短所を隠そうとする傾向が強いのです。特に女性はそうですね。

A そうすると販売側がやるべきことは・・・・。長所、美点を見つけ、それを拡げ、高める、ということでしょうか?

N さすがですね。長所、美点を見つける、それは周りにいる第三者の仕事ですが、気をつけなければいけないのは、それを指摘したり、説明してはいけない、ということです。お客様は売り場と言う場所で、短い時間の中で、「私らしさ」を見つける旅に話合いながら、共にコンテクスト(文脈)を共有しながら歩いてくれることを求めています。見つけるのは「青い鳥」かもしれません。理想的には販売する側とお客様の「私らしさ」がお客様の長所、美点の中で「融合」して、本当にお客様のものとなることです。

A 長所、美点を見つけるだけでも大変なのに、文脈を共有するということはどうしたらできるのでしょうか。ただ相槌を打っていればいいとうことではないでしょうし、また相手の言葉を繰り返すだけでは不十分でしょうし・・・。

N Aさん。そこに共創の精神が出てくるのです。共感しつつ、一緒にお客様と世界に二つとないものを創り上げていく。

A また話がちょっと難しくなってきました。一休憩していいですか。

N 勿論ですよ。このような話の時はしばしばの休憩がとても効果的なんですよ。背中を伸ばして深呼吸しましょうか。これから最後の山場になりますから。