日本のCSR先駆者・近江商人
近江商人の「三方よし」はCSRの源流と言われている。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の企業倫理が近江商人の成功の秘訣の一つにあげられている。売り手と買い手双方が喜び、商いをさせて頂いている地域のこと、世の中の恩に報いることを大切にしていた。「世間よし」である。江戸時代は藩内での自給自足体制を取っていたため、他藩の者がやってきて商いをすることは本来好ましいことではなかった。富山の置き薬で有名な置き薬の商人は藩主から「他領勝手」のお墨付きをもらって日本全国で薬の商いをした。現代風に言えば、顧客の支持、満足度がなければいくらお墨付きをもらったからと言ってそれほど売れるものではない。置き薬商法は藩の境界を越えて広がっていった。近江商人は「諸国産物廻し」という商法を特徴としていた。藩の境界を越えるために近江商人は、薄利多売とともに、地域の経済、文化や社会に貢献する活動を社会的責任の一環として、義務感からではなく当然すべきこととして自然体で取り組んでいった。この自然体、というところが特に重要だろう。近江商人は地域の雇用創出事業、「お助け普請」を行なった。文化芸術のパトロンとして文人は画人への経済的支援を行い、また自らも文化的素養を身につけていった。水害被害を防ぐために治山事業に巨額の寄付をした五個荘商人の塚本定次のような人物もいる。「世間よし」の世間とは社会全体に広がっている。このような広い視野を持った近江商人のCSR的感覚に私たちも何かを学ぶことができるはずだ。世間を相手にした三方よしのCSRは日本独自のビジネスモデルでもある。