日本農業・複合経営のビジネスモデル

 

TPP交渉に参加すると日本の農業が甚大な影響を受ける、従って反対だ、というのが、

JAの主張だ。しかし、今迄それ相当の時間はあったと思われるがJAはどのような自助

努力をしてきたのだろうか。農水省に対しても同じようなことが言えるだろう。交渉事は

黒か白かでは決着しない。単なる反対では国際的には相手にされないのではないだろうか。

以前読んだ本、「生き生きと農業をするための勇気」の中の対談で、以下のような発言を思

いだした。

■野菜や農産物の種がない

松村 そういう中で、本当にこれからの未来を担う、これしか日本農業が生きていく道はないのだ、という有機農業の小規模多角経営。このことが、どれだけどんなに安くていいものだと言われて外国から農産物が入っても、それを防ぐ意識的な層がどれだけ育っていくか、という、それにもかかってくるでしょう。

坂本 日本の地域を再興してそこの中で食っていけるように。そうすればアメリカから言われてもなんとかがんばっていけるかな、と。生活水準は落とさなければならないけれども。

■小規模複合経営のおもしろさ

飯沼 1町歩でも複合経営をやったら、無限に創意工夫の余地がある。そうなってくると非常に面白みがある。面白くなってくると後継者もできる。今、基本法最大の犯罪は

農業から面白さを奪ったことですよ。面白くなってくれば、結果として後継者も生まれる。だからやっぱり複合経営をすることでその面白さを取り戻す。複合経営しかないと思う。

槌田 複合経営で、知恵を楽しむ。複合化された伝統的な知恵をふくらませていくように、人間が成長していくことは人間にとって喜びなわけですから、だから喜びに満ちた仕事であるのか、画一的、機械的な、面白くない労働なのか。

 

複合経営とはその土地に根差した作物を複数栽培する方式であると飯沼二郎氏は言う。飯

沼氏によれば世界の農業は休閑農業(西南アジア、欧米)と中耕農業(東南アジア、東ア

ジア)に分類され、中耕農業では間作、混作、二毛作・三毛作を行なう。従い作付け方式

は複雑になる。中耕農業では耕起の深さと肥料の分解が密接に関係している。日本の農業

は限られた面積で複数の農産物を育てる技術を伝承的に受け継ぎ、発展させてきた。これ

が日本の有機農業の原型だった。そこには知恵と創造性、そして面白さ、自然に対する深

い理解があった。この日本農業のビジネスモデルを温故知新で復活させる時期が来たので

はないか。なおこの対談は1993年8月9~10日に行なわれた。