時代精神とビジネスモデルデザイン ルオーのピエロに寄せて

 

今週火曜日、ルオーのサーカス画を見るためにパナソニック汐留ミュージアムに行った。当初予定していなかったが、小田原での用事が早く済み、新橋駅4時の待ち合わせまで1時間程時間があった。カフェで本を読むことも考えたが、何日か前NHK Eテレ アートシーンだったろうか、紹介をしていたことを思い出し、それならルオーを見ようということにした。見て良かった。今回の展覧会はサーカスを愛した男、ということでピエロの絵が多く展示されていた。「小さな家族」「傷ついたピエロ」などの大作の他、印象に残る作品も数多くあった。会場にはボードレールの詩「パリの憂愁」の一節が紹介されていた。パリに生きる貧しい人を描いた詩だった。その詩を読みながら、ルオーとほぼ同時代を生きたリルケの「マルテの手記」冒頭の一節を思い出した。「人々は生きるためにこの都会に集まって来るらしい。

しかし、僕はむしろ、ここではみんなが死んでいくとしか思えないのだ」ルオーはサーカスの人々を描いているが、私は何故か貧しさ、裏寂しさ、望みなさを超える「聖なるもの」を感じる。受難の人生を生き、人々のために死んでいったキリストの生き方と重なる。ルオーのキリストの絵は独特だ。画家はその時代の精神、エートスを今日の私達に絵に乗せて運んでくる。そしてそれが、今日成熟経済、あるいは下り坂の社会の中で生きている私達に共感を呼び起こす。ビジネスモデルデザイナーは時代精神を常に意識する存在だ。さらにその先にある未来を。土曜日の夕方、この1週間の歩みを振り返りながら、さまざまな人との出会い、絵との出会いに思いを巡らしている。