暦と生活の豊かさ

 

千代田区立高齢者センターで野菜講習会の講師を務めている。前回の講習会の時、実習の前の講義で暦をテーマに取り上げた。暦が農作業と深い関係をもっていることを知って頂くために、二十四節気にも触れ、そして日本独自の暦である雑節も紹介した。二十四節気は古代中国で太陽の運行を元に考案されたものだが、雑節は日本で農業に従事する人々が、二十四節気では変化を読み取れないとして新たに考えたもので、節分、八十八夜、二百十日、彼岸、入梅、半夏生、土用入り、などがそれだ。また日本人は自然暦というか、生物季節の慣習も昔から持っている。植物の開花や野鳥の活動などから自然の移り変わりを目安にして農耕、狩猟、漁業に役に立てていた。私は現代において特にこの生物季節を大切にしたいとい考えている。うつくしいくらしかた研究所編で平凡社から「くらしのこよみ、七十二の季節と旬をたのしむ歳時記が出た。七十二の季節ということは、5日きざみということになるが、これを江戸時代に考えた人がいる。私は江戸時代の凄さの一つではないかと思う。確かに人間は自然の変化の中で生き、共鳴している存在なのだ。私たち現代人は、いつの間にか自然暦にも、生物季節にも、目を向けることを忘れ、感動する機会を失ってしまったようだ。使っているカレンダーは暦ではなく、スケジュール表になっている。温暖化で季節の感覚が昔ほど鮮やかに持てなくっている。だからこそ、と私は思う。日々の生活を豊かにする暦を現代人ほど持つ必要がある。