桜幻想

桜が満開を迎えている。桜の木の下を歩きながら思うことがある。桜は前の年に蓄積した養分のすべてを使い尽くすようにして花を咲かせている。それはまさに命がけの行為ではないのか。枝一杯に噴き出すように咲いている桜を見るとそう思わずにはいられない。よく枯れないものだと。桜の前に咲く梅の花からはなぜか命がけという感じは伝わってこない。寒さに耐えて咲く生命力を感じるが、桜のような激しさはない。春の青空を背景にした桜は本当に美しい。桜色と春の空の青さはお互いを引き立てている。満開の桜も好きだが、散り始めた花吹雪の桜も好きだ。最近は本当のお花見は花吹雪ではないかとさえ思っている。花吹雪の中に立っていると不思議な気持になっていく。桜はどこに向って散っていくのだろうか。その命の激しい噴出をどこに持っていこうとしているのだろうか。散り始めるとすぐに枝に若葉が溢れてくる。葉桜だ。蕾の時期、満開の時、花吹雪、そして葉桜。この全部のプロセスを楽しむのがお花見ではないか。最近の私はそのように感じている