江戸期の教材 「往来物」について

江戸時代、寺子屋などで使われた読み書きの教科書のことを「往来物」と言う。往来というのは手紙のやり取りで読み書きを学んでいたことからそう名付けられたとのことだ。往来物の起源は平安時代に迄さかのぼるそうだが、江戸時代には木版印刷が発達し、全国価各地に寺子屋が普及したため、往来物の出版数も種類も大幅に増えたとのことだ。「商売往来」「百姓往来」いろはで始まる教訓歌など。(以上は「往来物」研究家 小泉 吉永氏の今年1月24日の文化欄の記事による)私は最近時代小説「欅風」を書き終えたが、文中でお寺の一部屋を使った寺子屋の様子を書いた。書くにあたって寺子屋関係の本を探してみたが、もう一つ詳しい本が見つからなかった。小泉氏の文章を読むと寺子屋の勉強の読み書きの様子が分る。小泉氏は2000年に「往来物解題辞典」を出版されている。将来また機会があったら、是非小泉氏の辞典を読みたいと思う。小泉氏は往来物の価値について次のように述べておられる。

「いわば庶民文化を凝縮した資料であり、あらゆる分野の研究に有益なものだ」と。

現在、江戸時代についての関心が高まっている。私は庶民の生活、仕事、文化について興味を持っている。江戸時代は実にディープな時代だと思う。