法人とシステム

 

小嶋さんの本「あしあと」の中に示唆に富む言葉がある。「会社の経営者にとっても、成長の可能性と限界について、自らのイメージをどのように描いていくかということが最も大切である。成長するためには、成長しなければならない理由を見出さなければならない。そのためには観察しなければならない。全体としての組織を見なければならない。」特に私が目を留めたのは「成長しなければならない理由を見出さなければならない」という個所だ。多くの経営者は成長の結果には目を向けるが、理由に目を向ける人は少ないのではないか。成長するために、あるいは会社を大きくするために過大の投資をして行き詰ったケースは枚挙に暇がない。小嶋さんはどのような視点で組織全体を観察したのだろうか。どこが成長の限界と考えたのだろうか。この文章の後で、組織の法人化に触れている。法人化は資本と経営の分離を意味する。例えば、現在の農業は農家によって支えられている。つまり同族経営の農家が支えている、ということである。小売業と同じように、いや小売業に大きく遅れをとってしまったが、農業も法人化が必要な時代になってきているように思えてならない。やはり経営力、技術力がないとTPPの時代に生き残っていけないのではないか。また小嶋さんは言う。「企業の発展力を維持していくために、どうしても欠くことができないのは、システムを創造できる人材である。・・・革新力のないシステムはシステムとはいえない。・・・会社の中枢部に保守的な人間をおいてはならない」農業にとっても優れた革新力のあるシステムが必要である。どのような人材がそれを担い、推進していくのだろうか。以上のこともあり、私自身、農業の生産法人に現在強い関心を持っている。これから日本の農業の担い手は農業生産法人に移行していくのではないだろうか。そのためにも農業生産法人設立のハードルを下げてもらいたいものだ。