消費税増税と老後の資金
消費税増収予定分4兆5000億円を本来の目的の社会保障費ではなく、法人税引き下げ5兆円減税の穴埋め分として使うこともないとはいえない、というようなことを政府税調の法人税課税ディスカッショングループ座長・大田弘子氏が発言したとのことだ。この発言をどのように受けとめるか、それぞれの立場で意見は異なるだろうが、私は「話が違うのではないか」と感じている。
さて2014年度の予算は3月20日に成立した。一般会計総額は95兆8823億円。高齢化に伴う社会保障費は30.5兆円。道路・橋などを補修する公共事業費は6兆円。国債費は23.3兆円。歳入は税収50兆円、新規国債発行額41.3兆円となっている。
収入に占める国債の比率は43%に上っている。家計に例えたら、年間収入600万円のうち258万円は借金でまかなっているということになる。一方返さなければならない借金総額は目が眩むような膨大な金額だ。258万円の借金の中から借金の金利を返済している。このような日本の財政状況を見て、日本を見限る人達もいる。しかし、私たちはこの日本で生きていかなければならない。
今後、予想されることは国が国民に対してさまざまな負担を強いてくるということである。
まず年金だ。年金の支給額を一段と減らしたり、支給開始年齢を引き上げたりということが予想される。健康保険料率の引き上げ、介護保険料の引き上げも始まっている。
さて人生90年時代、60歳で退職したとして、残り30年間の経済的裏づけをどうするか。野尻哲史氏(フィデリティ退職・投資教育研究所長)によれば、退職後の生活のために準備できている資産状況は以下のようになる。
50代のサラリーマン男性で老後資産0の割合が28.2%(2139人調査)、1000万円以上が28.8%となっている。50代はまだ会社勤めしているので、定年退職時には会社からの退職金が見込まれる。会社にもよるだろうが、2000万円前後の退職金があれば、年金と併せて何とかなるだろうが、やはり30年間は長い。持ちこたえるのは大変だろう。老後難民化する可能性がない、とは言えない。いや高いだろう。
自助、共助、公助の公助の部分が財政難を理由に削られていく時代が始まっている。これからは自助、共助が求められる。この2つの中でも共助の部分の重要性が高まっていくと思われる。共助の仕組み、具体的にはコミュニティをどのように築いていくかで日本の将来が大きく変っていくのではないか。コミュニティに高齢者が参加し、同時にコミュ二ティが高齢者を支えていく、というあり方があるのではないか。
社会保障費は今年度30.5兆円計上されている。国の年間の歳入(税収など実際の収入)の実に60%を占めている。社会保障費は年金や医療費だ。これらは主に高齢者を対象に支出される。
高齢者は「国のお荷物」と思われかねない時代。ここは逆転の発想で、お荷物ではなくて、高齢者を「国の宝」とするような考え方がないだろうか。程度の差は当然あるだろうが、高齢者が安心して、主体性と社会性を持って活躍し、生きることのできる日本をつくっていきたい。そのためには高齢者の底力とコミュニティの力が欠かせないだろう。