理想と現実 あるいはコンセプトとシナリオ

 

私達は議論の中で「それは理想だ。正論かもしれない。しかし現実はそうはいかない。理想ではメシは食えないよ」と言ったり、言われたりする。この「メシを食えない」という言葉は強力な一言で、これで議論が終ることもあるくらいだ。このような時、私は現在の現実と未来と現在と未来を結ぶ過程に分けて、考えるようにしている。なぜなら理想は未来に関わり、過程は現在と未来を結ぶものであり、現在の何かはカタチを変えて未来に繋がっていくものだから。簡単に言うなら、「これからもメシを食い続けていくために、私達は守るものは守り、変えるべきものは変えていかなければならない」ということになる。イノベーションは新結合の遂行によって行なわれる。関係を変えることによって新しいものを生み出す。シュムペーターは「経済発展の理論」の中で新結合の5つの場合を挙げている。①新しい財貨あるいは新しい品質の財貨の生産②新しい生産方法③新しい販路の開拓④原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得⑤新しい組織の実現(岩波文庫 P183~184)興味深い指摘がこの後に続く。「新結合、とくにそれを具現する企業や生産工場などは、その観念からいっても、単に旧いものにとって代るのではなく、一応これと並んで現れるのである。なぜなら、旧いものは概して自分自身のなかから新しい大躍進をおこなう力をもたないからである」(太字著者)新しいものは旧いものに並んで、最初は特殊なものとして、発生する。組織の力関係で言えば、当然旧いものを支持する勢力が圧倒的だ。下手をすれば新しいものは潰される。それを跳ね返すためには説得力のあるコンセプトと現在と未来をつなぐシナリオが必要だ。私達ビジネスモデルデザイナーには新コンセプトのプロデュース力と可能な限りの複数のシナリオを書く根気のいる作業が求められているのだ。