田中愛子さんの本「I miss you!」を読んで

 

過日大阪池田市の田中愛子さんのキッチンスタジオに新大阪にあるベジカフェ・アルファのオーナー平塚さんと一緒に訪れた。午後4時前だっただろうか。1時間程田中さんのお宅でお話を伺った際、田中さんが書かれた本、「I miss you!」を読ませて頂き、購入させて頂いた。本のカバーが美しい緑で溢れている。早速東京への帰りの新幹線の中で第一章から読み始めた。私とほぼ同時代を生き、仕事をしてきた田中さんの文章を読みながら、私は度々ページを繰る手を止めていた。私は田中さんのご主人そして愛子さんの世界を舞台に活躍した人生と比べるべくもない平凡なサラリーマン人生を、一人の商社マンとして組織の中で生きてきたが、高度成長期が始まる頃、高度成長の高揚期、バブル時代、そしてバブル破裂後の停滞期のさまざまな出来事がフラッシュバックのように思い出された。田中さんと愛子さんご夫妻が1986年にアメリカニュージャージー州アルパインに高級和食レストラン「しん和」1号店をオープンした時、私はマレーシアでイワシの缶詰工場建設に携わっていた。それにしても「世界に挑戦するのだ」という田中さんのご主人の意気込みはまさに桁はずれで、その事業魂には読んでいて圧倒された。一方ご主人の事業の撤退、整理とともに活躍の舞台を失っていった愛子さんの喪失感と挫折感にはこころが痛む。そしてアリス・ウオーターとの出会い。人生は出会いと言われるが本当にそうなのだ。

「I miss you!」は愛子さんが書かれた田中さんご夫妻の自伝であり、また愛子さんの料理の写真で彩られている。繰り返し繰り返し読みたい本だ。なぜならそこに人生の真実があるから。