社会デザインとビジネスモデル

 

屋上菜園も含めた都市農業は東京という都市のリ・デザイン、東京と地方さらには日本全体のリ・デザインの一つの要素になるのではないかと考えている。屋上でも立派な野菜が栽培できるようにすることが目前の目標だが、その先にある大目標は都市農業を通じた社会のリ・デザインだ。社会デザインの場合、ポイントになることが3つあると思う。

1.成長経済から成熟経済の移行しつつある日本が、成熟経済の日本的モデルを構築する。

大事なことは一時的な経済的活況ではなく、持続可能で、すべての点においてクオリティーを高めていくモデルだ。そのためには「成熟経済とはどのような経済なのか。

具体的特徴は何か」のコンセプト設計が必要だ。私個人の思い付きでは、成熟経済は環境経済学を中心に、厚生経済学、空間経済学も動員して分析、構成されるのではないかと考えている。

2.社会デザインは個々のデザイナーの知的営みというより、さまざまな人間関係、社会関係のリ・デザインだ。そのためにはそれぞれの地域の文化、風土を抜きにしてはデザイン自体が成り立たないだろう。また人間関係、自然との関係も見直さなければならない。内山節は「共同体の基礎理論」の中で極めて重要な指摘をしている。「関係は生まれていくものであって、つくれるものではないのかもしれない」(P195)関係が関係として客観的なものになるには環境と時間が必要だ、特に継続的時間が。時間を継続的なものにしていく一つの要素は人間の側の「志」のような気がする。

3.社会デザインはその社会を維持しつつ、問題を解決するソリューション力を持つことが求められている。その意味で複雑系の都市デザイン活動の中から生まれたクリストファー・アレクサンダーの「パタン・ランゲージ」は参考になる。ある一つの問題の解決が新しい問題を作りだすということが多々ある。私達は一つの壮大で複雑な生態系あるいは身体として社会を見るように、今導かれているのかもしれない。「それは身体の中に分裂がなく、各部分が互いにいたわりあうためです。もし一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ、もし一つの部分が尊ばれれば、すべての部分がともによろこぶのです」(パウロの言葉)