神田の古本屋街でやっと見つけた本

時代小説「欅風」を書いている時、大阪の上層商人がつくった懐徳堂に関連して富永仲基のことが気になった。というのも岩波書店の日本思想体系シリーズを古本屋で4冊購入したが、「富永仲基と山片蟠桃」の1冊がなかなか手に入らなかった。それが今日神保町の古本屋で手に入った。既に購入した4冊は、「本多利明・海保青陵」「二宮尊徳・大原幽学」「石門心学」「渡辺崋山・・・横井小楠」。

江戸時代の文とはいえ、読むのは簡単ではない。当時の農民、商人の漢籍の素養にも驚かされる。富永仲基は懐徳堂創設の五同志の一人、道明寺屋吉左衛門の三男に生まれた。1746年、32歳という短い生涯だった。山片蟠桃の「夢の代」は確か岩波文庫から出ているが、富永仲基の「出定後語」は恐らくこの思想体系以外では読めないのではないか。

富永仲基は「加上」を提唱し、思想の発達を解明する史的方法論を確立した(水田紀久氏)と評価されている。

一方山片蟠桃は豪商升屋の番頭として全国数十藩の大名貸として、また仙台藩などの財政立て直しに才覚を発揮した、博学の町人学者でもあった。

これで読みたい本が一通り手元に集まったので、これからの時間を使って読んでいきたい。

本多といい、海保といい、富永といい、山片といい、これほどの独創的な現実的合理主義者が江戸時代輩出した理由は何だったのだろうか。