究極の日本型ビジネスモデル・吉岡宿

 

山梨県南部町に中央線と身延線を乗り継いで行った。電車の中で磯田道史氏の『無私の日本人』「穀田屋十三郎」を読み終えた。正直言いようのない感動で心の芯が熱くなった。『無私の日本人』は全て実話だ。フィクションではない。私は江戸時代、伊達藩吉岡宿にこのような人々がいたことに驚愕を覚えた。と同時になんとも言えない喜びを感じた。それは日本人の素晴らしさという言葉だけでは表現しきれない喜びでもあった。日本人の中の最良の人々は「無私」という言葉の真実を知っている。私は日本型ビジネスモデルの研究と実践をライフワークにしている。志、無私、苦しい時は助け合う、諦めない粘り強さ、藩の役人相手に筋を通す合理性に立った勇気。仙台藩の出入司・萱場杢をして「百姓にしておくには惜しい連中だ」と言わせた。私はこの「穀田屋十三郎」の中に日本型ビジネスモデルをデザインする金脈を見つけたような思いがしている。3月28日(木)午後6時からの第4回日本型ビジネスモデル研究で、鳴子温泉郷のビジネスモデル分析と併せて「穀田屋十三郎」のビジネスモデル分析も行なったみたい。最後に印象的な個所の一つを引用したい。「吉岡が貧しくなるのもつきつめれば、彼ら武士たちが、人馬役をこの宿場の人々の肩の上に課すからであった。萱場は、寒風ふきすさぶ山里のなか、浅野屋という小さな家族がはぐくんできたこの恐るべき思想的結論に戦慄した。どうしようもない空しさが、彼の全身を駆け抜けた。」