空間経済学と都市の再生
「空間経済学の観点から捉える日本再生~多核化への提言~京都大学教授 藤田昌久氏」の約2年前のインタビュー記事を再読した。藤田氏は日本が21世紀に生き延びるためには「知の創造」つまりイノベーションが求められていると指摘する。そして知識創造の場は、歴史的に見ても人々が集まる都市に生まれてきたので、都市再生は日本再生に大きくつながると所説を展開していく。箇条書きにまとめると以下のようになる。
(→は私のコメント)
1.知識創造の場は多様性から生まれる
しかし東京へ一極集中した結果、共有された知識の割合が非常に高くなり、固有の知識の領域、独自性が弱まっている。日本にいくつもの知識創造の場の核、つまり多様な都市をつくることが不可欠。
→それぞれの都市の差別化要素を明確にすることが都市にとって最重要課題となる
2.多核都市に向けた地域の可能性と関西の優位性
関西の中でも京都の企業が一番元気で、常に最先端を目指スピードでイノベーションを続けている。知識再生の場が人間の生活の場であることから生活機能を高度にする
必要がある。関西は東京に比べ職住近接性がある。会ってすぐに話ができる。関西は固有の文化、伝統を持った都市が電車で約1時間圏内に集まっている。
→この1時間以内ということの意味は大きい。大阪に行くたびにこのことを実感する
3.多様性を生み出す人的流動システムの構築
それぞれの地域に固有性と十分な差があれば、人が動いていく価値がある。江戸時代は300の藩に分かれ、それぞれ固有の文化、伝統、学問を持っていたので、人が循環する形になっていた。それぞれの地域に人材がいる、またまだまだ埋もれている
知識、伝統、資源があるが、それを皆で必死で考えるような環境になっていない。
→この300藩に分けた徳川政権の将軍と幕閣は徹底した分断・細分化統治を目指したのだろうが、結果的には300の多様性を生み出した、と言えるかもしれない
4.生活機能を高度化する空間の創造
人々が来たくなるような生活の機能の充実という意味では、ヨーロッパやアメリカと比べて日本の都市はレベルが低い。住居のレベルの低さが問題。物価が高く、不動産も高い。また自然環境も含め町の落ち着きも足りない。
→一度海外生活をすると、このことを痛感する。
5.21世紀に生き残る生産活動のあり方
基盤サービスは何千という企業が一つになっているところで形成される。そのため製造業を日本にキープしていたが、大企業が基盤サービスまでも囲い込んで海外移転をしたため、集積力の源泉は弱くなってしまった。
6.フロンティアの精神で21世紀を切り拓く
必要に応じてチームを組むような組織が必要。硬直したシステムでは速いイノベーションにはついていけない。プロジェクトごとに企業を超えてチームを組むというやり方は、アメリカのフロンティア精神から生まれている。日常圏的に共有された知識を ベースに、違った才能を持って、互いに切磋琢磨しながら得意の分野を伸ばしていく。
これは新しい産業を自己組織化して育てる仕組だ。オープンなシステムをつくり、新しいものを生み出していく、新しいフロンティア精神の時代が来ている。
→このプロジェクトごとに企業を超えてチームを組むというやり方は、はまさに小企業、ベンチャー、零細企業の間で実現・実施することが求められている、と思う。
必要があれば、すぐ集まり、相談し、ブレストし、新しい知を創造し、イノベーションに向かう。今は戦略的同盟の時代なのだ。