第二世代のビジネスモデル

紺野 登氏が東洋経済新報社から「ビジネスのためのデザイン思考」を出されている。2010年12月の発行なので、今から約3年前だ。このことを念頭に置きながら読む必要があるが、紺野氏は第一世代のビジネスモデルが本当の意味で企業にとって経営議題にならなかった理由を説明した後で、企業経営にとって本当に必要なビジネスモデルとはどのような発想と構造を持つべきなのかを提言している。それが第二世代のビジネスモデルだ。

第一世代のビジネスモデルは企業の競争優位を実現するための戦略論であり、サプライサイドの発想であり、顧客価値の視点、多様な資源やパートナーとの関係性の視点、ダイナミックな進化の視点のいずれかが欠けていたと指摘する。そして再度ビジネスモデルについて注目するのは(1)価値創出の仕組みが重視されるようになった(2)企業活動が社会や環境との関わりの中で再考されねばならなくなった社会性の2点の故としている。そしてビジネスモデルの「3層」構造を挙げている。①顧客価値(提供の場)②製品・サービス(モノ、情報、金)③能力・資産・関係性。

2012年2月、日本で「ビジネスモデル・ジェネレーション」(ビジネスモデル設計書)が翔泳社から発行され、ベストセラーになった。しかし欧米ではすでに広く読まれていて、紺野氏もこの本を参考にしている。

「ビジネスモデル・ジェネレーション」は私のビジネスモデル研究のための座右の書だ。現在も必要がある都度、読んでいる。この本の優れているところは多くあるが、2つだけ挙げるとすると、

1.ビジネスモデルを構成する関係要素を一覧的にキャンバス化した

2.要素の関係性の組み合わせを一覧的に見ることができる

ビジネスモデルは固定的なものではなく、環境変化、時流に合わせて進化していかなければならないものだ。そのためには絶えず関係性をデザイン思考で変えて、ダイナミックなものにしていくことが重要だ。「ビジネスモデル・ジェネレーション」もこの面には余り触れていない。またこの日本でビジネスモデルをデザインする場合、日本のビジネス思考、風土に根差した部分も大事にしたい。

ビジネスモデル理論自体も実証研究が進み、変貌、進化しつつある。私のライフワークは「これからの世界が必要とする日本型ビジネスモデル」だ。