経営学、経営理論を学び、活かすためには

私達ビジネスに関わるものは最新の経営理論を学ぼうとする。実業家が書いた経営理論もあれば学者が書いた経営理論もある。実業家の場合は自身の経営活動の中から産み出されたものなので、「私が経営の現場で考え、気付き、学び、苦闘して一つの体系にした『私の経営学』」という性格のものになるだろう。一方学者の経営理論は研究対象となる各社の経営の実態及び特徴またその背後にあるいわば暗黙知を論理化、あるいは抽象化、セオリー化したものと考えてみると自ずから、私達の側の読み方が変ってくる。前者は経験的、帰納的であり、後者は演繹的と分類してみたい。

まず前者。経営者の本を読んで感動し、自分もそのようにやってみたいと思っても、それをそのままマネしても上手くはいかない。なぜなら経営の現場が異なるからだ。一度抽象化、普遍化の作業を自分の中で納得が行く迄行なう必要がある。その上で自分の特殊な経営現場に適用し、<肉体化する>というプロセスを経ることになる。

一方学者の理論は論理化、抽象化されているので、それをそのまま経営の現場に押し付ける訳にはいかない。自社の経営現場の独自性に合わせて編集しなおして、<肉体化>していくというプロセスが欠かせない。いずれも自分の経営現場に合わせるという「プロセス」が重要であり、それが一番難しいことなのかもしれない。

経営者の経営学も学者の経営理論もその源泉は経営の現場にある。最近新聞で知ったことだが、ある大手化学系の企業のトップは経営関係の本は読まないと言っていた。これには驚いたが、言わんとするところは経営は日々変化する内部環境、外部環境に向き合いながら具体的問題を解決していくものであり、流行り廃りのある経営理論を振りかざすのはかえって判断を誤らせることになる、ということではないかと私なりに受け止めた。

確かこの経営者が読んでいる本は人間と歴史に関るものだった。