自主廃業について (1) 

 

円高、デフレ、売上高の減少と中小零細企業の経営環境が厳しさを増しています。多くの

経営者が資金繰りに苦しみながら、会社の将来に対する不安を抱えながら、何とか会社を存続させるために日々頑張っていることと思います。とはいうものの頑張りにも限界がありますね。

最近、週刊ダイヤモンドの12月17日号が「廃業」のススメを特集しました。頑張りすぎないで、もう無理だと思ったら「廃業」という選択肢がありますよ、というのが特集が言わんとするところでしょう。

10年一昔といいますが、2000年8月に会社の自主廃業を決断し、2001年11月に廃業を完了しました。自主廃業業務は14ヶ月に亘りました。当時のことが昨日のように思い出されます。8月、暑い日々、会社の将来を思い眠れない夜が続きました。そして

会社を閉じることを決断しました。その時は自主廃業は願望としてありましたが、実際は無理ではないか。現実的には倒産は避けがたいのではないか。それならできるだけ高い弁済率が可能になるようにしていこう、と決めました。と同時に倒産が現実になったことで

自分を責めずにはいられませんでした。夜、泣きながら拳で枕を叩きました。そしてふがいない自分に一つ誓わせたことがあります。それは「絶対に逃げない。幕引きという社長としての大仕事をやり遂げる」ということでした。

その後いろいろなことがありましたが、自主廃業のメドが立ち、仕入先、得意先、また金融機関などの皆様の温かい理解と支援を受けながら、無事自主廃業を完了しました。長い撤退戦でした。最後に残ったのは私一人でした。どなたにも金銭的な迷惑を一切かけずに済みました。一人で会社の葬式を挙げました。

あれから10年。改めて自主廃業について考えてみました。

1.自主廃業は少し早すぎるぐらいのタイミングで行わなければならない。

周囲の人達がまだ大丈夫ではないかというタイミングで決断する。それで実際は

ギリギリのタイミング。

2.自主廃業は社員を守る。社員に倒産企業の社員という烙印を押させない。

3.自主廃業は家族の生活と財産を守る。

4.自主廃業は経営者にとって反省と鍛錬の期間となる。

5.自主廃業であれば大きな負債を抱えることがない。人目を避けないで済む。

 

自主廃業を決めた時、社長は代表精算人となります。代表精算人は撤退戦の先頭に立ちます。心身共に健康でなければ自主廃業を完遂することはできません。自主廃業を決めても、いつそれが崩れるかもしれないという、緊張感、危機感に晒されながら解散業務を日々続けていくということになります。

私自身、よく最後まで持ちこたえたと思います。火事場の馬鹿力もあったのでしょう。

大事なことは、経営者は危機管理意識を持って、どういう状態になったら自主廃業を検討するかのガイドラインを設定しておくことです。そして定期的なチェックです。頑張り過ぎない、ことです。頑張り過ぎると正常な判断が次第に出来なくなります。

廃業は恥ずかしいことではありません。

そのためにも会社が無くなっても生きていくことができる自分なりの夢、使命感を人間として持つことです。一人の人間に戻る覚悟を持つことが大切です。 (続く)