自分探しの旅

群馬県の山の方に来ている。今晩はここに一泊させていただく。夜、家の外に出てみた。真っ暗な空に星が輝いている。まさに無数の星が輝く、と言う感じだ。

旧約聖書の創世記には、主なる神がアブラハムを外に連れ出して仰せられたとある。

「さあ、天を見上げなさい。星を数えることができるなら、それを数えなさい。」さらに

仰せられた。「あなたの子孫はこのようになる。」彼は主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。

主なる神とアブラハムのやり取りを私は思い浮かべたが、その時、私の心の中に広がっていた思いは、「もう自分探しの旅は終りにしなければいけない。本当の自分を探すことを生きる目的にして、あるいは生きようとする力に変えて生きてきた。それは間違っていた。ヘッセの「デーミアン」、森有正の「バビロンの流れのほとり」から私の自分探しの旅が始まったように思う。どこかで軌道修正が必要だったのにそれが出来なかった。長い長い旅だった。しかし何も成し遂げていないし、いわんやゴールに到着した訳でもない。輝く星を見ながら、「もういつ死んでもいい。私にこれからできることは取るに足りないことだ。もう思い残すことはない」そう思うことができた。