資生堂の社長退任とビジネスモデル問題
資生堂の末川社長が今月31日で退任する。本人は病気と説明しているが、実際は業績不
振の責任を取ったのだろう。資生堂の連結業績を見ると、2008年のリーマンショック
以降営業利益は減少の一途を辿っている。2008年の600億円に対し、2013年3
月の予想は200億円強だ。約1/3に激減している。当然経営陣は相当な危機感を抱いて
いたことだろう。新聞を読んで思ったことは、末川社長は昨年4月に発表したインターネ
ット事業で建て直しを計ろうとしたが、十分な成果を上げることができず、いわゆる「燃
え尽き症候群」に陥ったのではないか、ということである。そして尖閣列島問題で中国販
売が約20%落ち込むという事態になり、トドメを刺した。ここ半年間は煩悶の日々を送
られたのではないかと推察する。池田元社長時代、サーバントリーダーシップの掛け声の
下、資生堂チェインストア(契約店舗)のてこ入れを行なった。在庫操作による売上げの
嵩上げなど悪癖の解消も行なわれと聞いた。確かに資生堂は資生堂チェインストア制度を
経営の基盤として、守るべき販売のリアルの前線として重要視してきた。ところが昨年4
月発表されたプレスリリースを読むと大きな変化が見てとれる。「ウエブを活用した新ビジ
ネスモデル全体像」では二つのサイトBeauty & Co、「Watashi+」と店
舗のリンクをビジネスモデル的特徴としている。お客様が増える→ビジネスチャンスが増
える→参加企業が増える というサイクルを回すという訳だ。しかし、このプレスリリー
スを仔細に読むと、ほぼ一方的な価値提案だ。そこには世界第3位のユニリーバのような
お客様との価値の共創・共有という姿勢が弱い。今回の資生堂のビジネスモデルについて
の分析は別の機会に譲ることにしたいが、一つだけ言えることは野菜の種、苗と同じよう
に播きどき、植え時があるということだ。昨年4月では余りにも遅すぎた。