農本主義について
今朝の日本経済新聞朝刊に興味深い記事が載っていた。題は「農本主義が放つ現代性」。まず戦前日本の代表的な農本主義者橘孝三郎(1893~1974)。橘の思想の再評価を提起している。橘の農本主義は、以前は日本を戦争に導いたファシズムの一種という捉え方が一般的だったが、実は先進的取り組みもなされていた。例えば畜産と穀物、野菜栽培を組合わせた有機農業と協同組合。橘以外の農本主義者は中国の影響を受けて「日本村治派同盟」を結成したり、キリスト教と結びついた「農民福音学校」などの活動があった。さて問題は農本主義を現代に活かすことができるかだ。福岡県糸島市の宇根豊氏は「農本主義が未来を耕す」を刊行して、新しい農本主義を唱えている。また人間の生の拠り所を国家ではなく「社稷」(しゃしょく)という郷土自治に求めた権藤成卿(1868~1937)らの思想を再評価する試みを宇根氏は進めている。宇根氏の次のような言葉に耳を傾けたい。農村の景観、仕事の喜びなど「経済的な物差しでは評価しきれない農の価値を説く理論を鍛え直したい」
私自身、最近「農」の価値に関心を寄せている。それも全体的・包括的価値だ。宇根氏の本を読み、氏がどのようにして農の価値を説く理論を鍛え直すのか、氏から私も学んでみたいと思う。今こそ農の価値に光を当てる時だろう。