逆境生かし成長戦略再編

 

1月4日の日経新聞朝刊「経済教室」で大和総研理事長の武藤 敏郎氏が標記のテーマで所論を述べておられる。最後の部分にこうある。「企業のみならず、より少ないコストで大きな便益を得ることを目指した社会全体のイノベーションも重要になってくる。もちろん、これらを実現していくのは最終的には一人ひとりの国民だ。人材育成が日本経済再生の根幹をなすものであることを忘れてはならない」この記事を読んで、少し気になったのは「社会全体のイノベーション」という言葉だ。そしてその担い手が国民である、とはどういうことだろうか。イノベーションを最初に唱えたシュンペーターは非連続的な変化こそが「創造的破壊、すなわちイノベーションと規定し、それはさまざまな物や力の「新結合を遂行」することによってもたらされるとしている。社会的イノベーションが可能になるのは、社会が新たな価値あるいは想定を超える価値を受け入れる時と言われる。社会的イノベーションはそれを引き起こす側とそれを受け止める側の主体、客体の関係の中で遂行されていく。客体が新しい価値を否定すれば、イノベーションは実現しないという事態になる。社会を構成する人々は通常変化、特に非連続的変化は望まず、現状維持に傾く性向を持っている。そのような人々が非連続的変化を受け入れるのは、そのままではやっていけないような大きな危機に直面した時とか、時代の根本的変化を理解した時ではないだろうか。現在の時点で大きな危機は武藤氏が指摘されるように少子高齢化と世界経済のグローバル化と言えよう。日本企業は活力の源泉を失いながら、世界的な激しい競争に巻き込まれていく。また時代の根本的変化とは高度情報化社会から高度知識社会、高度価値社会への転換ということではないかと思う。情報から知識を生み出し、それを価値に転換していくということに他ならない。日本人は現在直面している根本的問題、というより危機と正面から向き合い、知識を価値に高めていく必要がある。そうであれば国民一人ひとりも担い手になることができる。更に言うならば日本人自体が日本人の特性を活かしつつ、自発的・集団的非連続を実現することが期待される。まず地方からそのような取り組みが始められるかもしれない。