都市型屋上菜園ガーデンと街の魅力・価値について

都市の中で全く経済的価値を産んでいない空白のスペースがある。それもほぼ無尽蔵にある。それはビルの屋上だ。ということで屋上開発研究会のような団体が組織され、現在では太陽光発電などにも屋上が利用されている。さらに最近では屋上を芝生緑化し、観葉植物、家具などを置いて、もう一つの居住空間として活用するケース、屋上利用型住宅も人気があるようだ。屋上は風が強いが、誰からも邪魔をされない開放的空間で、また快適な場所でもある。それで屋上を緑化する場合、やはり楽しめる場所として考えてみたい。ただ見るだけではなく、楽しいという価値を産みだす、特別なスペースとして考えてみたい。私が以前から取りくんでいるテーマだ。

都会に住む人々は緑に飢えている、と言ってもいい。現在丸の内仲通りでは高層ビルの建築と併せて緑化の整備工事が進んでいる。デヴェロッパーは街の魅力開発に生物多様性の要素を積極的に取り入れている。街の魅力を高め、人々が来たくなるような、癒しと快適性と利便性を併せ持った街づくりに舵を切っているように思われる。東京駅の八重洲口でも最近大掛かりな植栽工事が行なわれた。

東京は江戸時代、緑に溢れた人口100万人を擁する世界に冠たる巨大都市だった。しかし森の都だったのだ。石川英輔氏の計算によると大江戸と呼ばれる地域、すなわち朱引内では約半分が農地だった。「大江戸えころじー事情」(P127 講談社文庫)

都市の中の緑を増やす。それは何もデヴェロッパーだけに任せておけばいいという性質のものではないだろう。私達も自分の家で、またビルの所有者であればビルの回り、屋上を緑化し、生活の潤いを取り戻したら良いのではないか。江戸時代の園芸ブームを現代において復活させたい。それが東京という索漠とした街を甦らせる力になる。2020年のオリンピック、東京にくる外国の人々は飛行機の中から緑溢れる街を目にすることだろう。