都市緑化・菜園マーケティング試論

従来マーケティング活動の一番重要な課題はいかにお客様に買って頂くか、つまり購買行動を起こさせ、対価の支払をスムースに行なわせることにあった。つまり売って終り、ということだった。私が関っている屋上緑化・屋上菜園事業でもそのような状況が垣間見える。緑化の菜園も施工が終ってお客様に引き渡された時から、お客様にとっても本当の使用価値化、体験価値化が始まるのだが、施工業者は施設のメンテナンスは契約に基づいて行なうが、使用価値化、体験価値化については充分な対応をしないことが多い。理由は使用価値化、体験価値化のための知識、経験、ノウハウが乏しいことだ。都市部で屋上緑化が、菜園が手入れが適切になされないため荒廃化しているところが散見されるのは理由のないことではない。

今迄の緑化は都市環境の改善、景観向上のために論じられ、施工されてきた面がある。菜園は中国ギョーザ事件をキッカケに安心安全な野菜を自分で栽培し、食べたいという都市住民のウオンツから貸出菜園、ベランダ・屋上菜園という形態で普及しつつある。屋上緑化・菜園、都市緑化・菜園を一過性のブームにしないで、定着させていく鍵はどこにあるだろうか。正確に言えば一つの鍵ではなく、鍵束が必要になるだろうが、重要な鍵の一つは緑化・菜園の使用価値化、体験価値化ではないかと思う。価値は客観的真理と異なり、価値の受け手によって価値享受の仕方、評価が異なってくる。企業、団体、公共施設、個人、とそれぞれの受け手によって価値の多様化が実現されることになる。これからのマーケティングは売る迄に全力を注いできたが、これからは売ってからに全力を注ぐべきではないか。それがサイクルになって「売る迄」にも戻ってくるはずだ。