都市農業の振興について

 

農水省が今年の8月に「都市農業の振興に関する検討会」を開催し、「中間とりまとめ」を公表した。その中で次のような興味深い個所がある。

「我が国の社会・経済は、人口の減少、高齢化の進行等大きな変化を迎えている。社会の成熟化が進み、国民の意識も多様化する中で、より質の高い生活への希求が強まり、自らの目で生育の過程を確かめることのできる安心・安全な食料を食べたい、老後の時間を活用し自分や家族の食べ物を自ら育てて楽しみたい、都市の中にあっても自然と調和した快適で安全な環境で暮らしたいといった様々なニーズを生んでいる」

昭和43年都市計画法が制定され、農地を計画的に市街化する流れをつくった。これに対応する形で昭和44年、農振法が制定され、優良農地に限って保全するという施策の結果非優良農地は虫食い的に住宅地に転用された。バブル期には「宅地化する農地」と「保全する農地」の色分けが一層鮮明になった。1968年から2002年の間に約26万haの農地が消滅した。そして現在、大都市圏の人口は減少傾向に転じ、大都市圏では用途のはっきりしない空き地が生産緑地面積を上回る2.4万haにもなっていると言う。また空き家率が都市部では平成20年に13.1%に増加しているにもかかわらず、年間3~4千haの農地が消滅し、宅地に転用され続けている。「中間とりまとめ」ではこの問題の解決をどうも半ば都市住民に期待している節がうかがえる。現状では「農地保全・活用対策」なのだろう。農地をどのように活用するかの方法論だけでなく、人口減少社会、高齢化社会という現実の中で、「都市と農の共存・共生」絞って言うならば「東京のあるべき姿・農地のかけがえのない役割」についてのビジョンが行政・農業者・市民によって共有されることが必要ではないだろうか。日本人はどうも問題が起こってから応急処置的に対応を考える傾向がある。未来と現在を往還し、現在の現実に戻ってくる、という考え方をとってみたらどうだろうか。