里山資本主義を巡って

 

友人のTさんとカフェで暫く資本主義について意見を交わした。というのは待ち合わせのカフェについた時、Tさんが最近出版された話題の「里山資本主義」(角川文庫)を読んでいたからだ。Tさんから、まだ読んでいる最中とのことだったが、本の感想を聞かせて頂いた。またTさんは日本航空を再建した稲盛和夫氏の本の愛読者でもある。Tさんは自分がかつて経営していた中華料理店で、メーカーとサービス業という違いはあるが、それを踏まえた上で稲盛理論を実践し、ランチタイム3回転も含め大きな成功を収めた。Tさんは里山資本主義と稲盛理論は共通した部分があると言う。現在資本主義はアメリカ型の金融資本主義が主流をなしているようだが、サブプライムローンでも明らかになったように金を資本の中心と考える行き方には大きな危うさが潜んでいる。かつて農本主義という考え方があった。しかし、そこには農を資本とする考え方があったのだろうか。資本は生産、流通過程を経て、必ず剰余価値、つまり次ぎの新しい資本を生み出す、資本の循環的・拡大的傾向を本質的に持っている。里山で、また成熟経済の中では資本はどのような「振る舞い」をするのだろうか。経済学の本を読んで改めて考えてみたい。

Tさんとは少し硬い話をした後で、話題がガラリと変り、海外旅行の話になった。「いつか一緒にヨーロッパ旅行をしましょう」。カフェを出るとまぶしいくらいの晴れた秋空だった。