食卓の会話

忙しいと食事の後、すぐに仕事に戻ってしまう。しかし、あることがキッカケになって食事のあり方を自分なりに考え、反省した。私達の世代は「食事中はおしゃべりをしないでさっさと食べる」「男は台所には入らない」という教育を受けてきた。私自身その考え方を長くひきずってきた。子供が独立し、私達夫婦2人の食事になってからは食事をしながらいろいろと話すようになったが、仕事が残っている時は早々に切り上げて仕事に戻っていた。しかし、やはり食事の時間は、本来は家族団欒の時なのだ。「食卓のフィロソフィー」を提唱されている田中愛子さんは10ヶ条を上げておられる。今の私は特に第3条の「人と語り合い、笑い合える食卓は、人生の宝物、もっと楽しみましょう」を大切にしたいと思っている。夕食の時、夫婦で今日一日の出来事をそれぞれ伝え、語り合い、そして「今日こんな面白いこと、楽しいことがあった」と笑い合う時、平凡な生活(実はそれこそが大切なのだが)の中に幸せを感じる瞬間がある。食事の時間は食べるだけではなく、会話の時でもある。それも事務的な話だけではなく、お互いの気持ちを通い合わせる時でもある。日本人は会話があまり得意ではないと言われる。察し合いの文化があるからだが、やはり言葉は重要だ。豊かな会話をする、これは私達にとって大きな課題の一つだろう。子供の頃、アメリカのテレビ番組「パパは何でも知っている」を見て、憧れたことがある。

それはアメリカの生活の物質的豊かさもあったが、パパを中心に家族が楽しく語り合っている光景だった。今そんなことも思い出している。