首相の70年談話を聞いて

安倍首相の談話を聞き、また翌日の新聞で談話の全文を読んで思うことが多々あるが、ここでは2つに絞って私の感想を述べてみたい。

まずこの件だ。

1.「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の8割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」

この言葉は言い換えれば戦争を行なった当事者達、そして戦中・戦後直ぐに生まれた私たちシニア世代が謝罪の宿命を引き受け、私たちの戦中・戦後世代で謝罪は終りにする、ということになる。加害者と被害者の関係では、被害者に「終りにする決定権」があり、加害者の側にはないのではないか。被害者の側から「もう終りにしましょう」と言って頂いてこそ終りにすることができる。日本は戦後、被害者、つまり日本軍によって侵略された国々に対して、「終りにしましょう」と言ってもらえるような努力をしてきただろうか。

2.「我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値をゆるぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて・・・」

日本は危機に直面すると総力戦体制を取るDNAを持っている。どのような組織であれ、多様な考え、異論は排除される可能性がある。私は自由、民主主義について世代を超えて日本人は徹底的に討議すべきではないかと思う。自由とは、民主主義とは・・・歴史と向き合いながら具体的なイメージも含めて内実が、本質が明らかにされる必要がある。

基本的価値は宙に浮かぶ抽象的価値ではなく、具体的なストーリーを持っていなければならないと思うからだ。