日本型ビジネスモデルセミナー「地域を守る」
今日は日本型ビジネスモデル事例研究セミナーの第4回目、テーマは「食の自治、経済の自治」。事例研究は宮城県の吉岡宿と鳴子温泉峡を取り上げた。吉岡宿の事例は江戸時代の伊達藩で、吉岡宿の人々が自分達の地域を守るために必死の思いで考えついたビジネスモデル「藩から金を取られる側から金を取る側に回る」という当時の社会では途方もない仕組みだった。伊達藩の会計の最高責任者 財用方取切の萱場杢を向こうに回し、吉岡宿の2人が幾多の障害と困難を乗り越えて、画期的な仕組を実現する。その結果、吉岡宿は明治維新迄毎年、伊達藩から1割の利息を受け取り、吉岡宿を支え続けることができた。
この吉岡宿のビジネスモデルの特徴は3つある。①吉岡宿維持のための地域救済事業②資金運用③伊達藩に貸し付ける。当時の社会の特徴、つまり大藩である伊達藩でも幕府から
普請を仰せつかると財政窮迫に拍車をかけることになること、また当時の経済社会では資金需要が増加していたことなどがこの仕組み、ビジネスモデルが成功した重要な背景となっている。特にこのビジネスモデルを具体的に構想した菅原屋篤平治(茶屋)の頭脳には驚嘆させられる。この思想は温故知新で現代にも活かせるのではないだろうか。このビジネスモデルの研究には磯田 道史氏の「無私の日本人-穀田十三郎」をテキストにさせて頂いた。
現在の鳴子温泉峡の「鳴子の米 プロジェクト」は鳴子の米、すなわち「ゆきむすび」を守り、育てていくために鳴子温泉峡の人々が創りあげたビジネスモデルだ。特徴は2つある。一つはお米の価格に若者の農業支援費、お米の食べ方の開発費などを、つまり拡大再生産のための費用を組み込んだことだ。もう一つは地域住民、地域の食品業者、地域の観光業者が鳴子の米を使い、価格レベルを支えていることだ。お米をモノとして外に販売するよりも鳴子に来て食べてもらうことで、旅館、交通機関、食べ物屋、土産物屋などにお金が落ちる。このため鳴子温泉峡の人々は昔ながらの伝統と合わせて現代的なニーズに合わせた商品とサービスを開発している。有名なコケシもイヤリングになっている。また温泉では湯禅というサービスをしている。源泉の熱を利用した乾燥野菜、乾燥果物のメニューも開発し、新しい味でお客様に喜んで貰っている。地元の人々の地域を守る努力が胸を
打つ。地域の魅力的な資源、埋蔵文化財を発掘し、育てて、地域を守っていく。グローバル時代の光と影が顕著になったこの時代、地域の振興を真剣に考えたい。