BtoBとBtoC

ある会社の社長と雑談していた時、「BtoBの世界では客先の力が強く、相手の言いなりになるしかなく、まるで奴隷ですよ」と言われたのには少々びっくりした。私も以前鉄鋼特約店を経営していた時、同じような経験をしたことがあった。建築用資材の価格交渉の時だった。度が過ぎた根引き要求を受けた時、「そこまではどうも」と言いかけた私に、ゼネコンの購買担当者はこう言ったものだ。「現場で働く人間は手間賃を叩きすぎると泣くが、鋼材は泣かない」と。15年以上前のことになるだろうか。相手にも相手の立場、責任があるが、そのような考え方が今日の建設業の人手不足を招いているように考えられなくもない。私はそこに建築業界の一種の封建制も感じたりした。それにしてもBtoBでずっとやってきた会社は簡単にはその業界の枠からはみ出すことはできない。将来の利益の伸び代が期待できないと考えて、BtoCの商品展開を考えようとしても、そう簡単にできるものでもない。下請け構造から抜け出すというのは大きなリスクを伴う。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、遅かれ早かれいつかはそのリスクに立ち向かう時がくる。場合によっては相手企業が、客先の大手企業が倒産などで無くなってしまうことだってありうる。中小企業がBtoCに向う時は、やはりビジネスモデルのデザインが不可欠だと私はいつも思っている。社長のアイデアだけで突っ走ってはいけない。中小企業こそ、チームによる徹底的なビジネスモデルの検討が必要だ。