NHK日曜美術館・奥田元宗の絵を見て思うこと

奥田元宗の絵を初めてみた。このような日本画家がいたことを私は知らなかった。奥田画伯は人にはそれぞれ備わった色があり、自分には赤がそうだった、と言われている。秋の紅葉を描いた大作に圧倒される。いや息を飲むばかりだ。その中で海と空と初夏の田園風景を描いた作品に私は惹かれた。人は自然の中で生まれ、自然と共に生き、働き、そして死んでいく。その厳しさと美しさを、私はどれだけ知っているだろうか。少年時代に元宗は既に芸術に生きることを心に誓っている。芸術に生きるということは大変なことだ。最晩年の作品は輪廻をテーマにしているが、芸術の真髄は求めれば求めるほど、さらに遠のき、たった1回の人生では近づくことさえ叶わない。もう一度生まれ、いや何回も生まれ変わって芸術の真髄に迫りたいという思いが、画を通してひしひしと伝わってくる、達観と祈りがこめられた画だ。銀閣寺から依頼された画も本当に胸を打つ。奥田元宗が自分の画業の集大成として描いた画とのことだ。私の人生は芸術そのものではないが、自分の人生とその中心にある魂を何らかの形で表現したいという願望がある。それが仕事であったり、ライフワークであったり、さまざまな形を取ることだろう。集大成とはどんなことなのか、考えていくキッカケを奥田元宗の画が教えてくれた。