中国の解放

中国リスクが懸念される今日、現在中国がどのような発展段階にあるのか、冷静な把握が必要と思われる。まず経済発展の段階で言うとどこまで来ているのか。世界経済がグローバル化している今日、また一国経済の中でも様々な経済的側面があるので単純化するのは難しいが、敢えて言うなら基本的には「国家独占資本主義的工業化・公共投資主導型社会」ということになるのではないか。それに対し日本は「知財化・サービス化社会」ということになるだろうか。現在の中国にとって最大の課題は大方の識者の見解ではイノベーションと言われている。また安定した中産階級の形成も重要な課題という指摘も多い。

これらを実現するためには、制度的にも、精神的にも民主化、自由化が喫緊の課題となるが、政治的統制にこだわる現政府にとっては「自己否定的」行為になる可能性があり、実現には紆余曲折が予想される。その実現が遅れるようであれば、中国は長期に亘る停滞を余儀なくされるのではないか。それが社会混乱を招かないことを望むばかりだ。なぜなら社会混乱の最大の犠牲者はいつも一般庶民だからだ。5年経ったら東南アジアの勢力地図は大きく変っていることだろう。中国政府は自らの意志で中国を古い制度から解放することができるだろうか、あるいは下からの突き上げで変っていくのか、あるいは孤立化していくのか。

中国の粗鋼生産量は約8億トン。驚くべき数字だ。世界の総生産量16億トンの半分を占めるまでになっている。中国の世界経済への影響は極めて大きい。

経済的・外交的・軍事的対応が日本にとって今ほど大きくなっている時代はない。その意味でも中国の古い体制からの適切な解放に向けて日本政府も日本企業も、さらには日本国民も冷静かつ賢明な対応をしなければならないと思う。