東京を冷やす

 

今年の夏は40℃を越すところが出てきている。まさに猛暑だ。そしてこの暑さは昨年と同じように10月迄つづくかもしれない。日本が四季の国から二季(夏と冬)の国になる可能性も指摘されている。さてここで改めて人口密集地の都市部、特に東京、大阪市を冷やすことを真剣に考えなければならないと思う。特に都市部では車の排ガスやエアコンの排熱がヒートアイランド現象を生み出している。都市を冷やす方策の一つとして期待されているのは海の風を東京の奥深く迄引き込んでビルを冷やす方法だが、この方法は再開発の場合にはビルの配置を考慮することによってある程度有効かもしれないが、現在の問題解決には間に合わない。夏を冷やすために打ち水をすることが奨励されているが、見た感じの効果に留まるのではないか。江戸時代、四谷大門からの道は地道だったという。大門周辺の商家が協力すれば、地道を石畳にすることは費用的には簡単に出来たのではないかと言われている。石畳の方が地道に比べ、歩くのも馬車などが走るのも便利だったはずだが、住民は敢えてそうしなかった。夏対策のためであった。石畳よりも地道に打ち水をした方がずっと冷却効果が高いことを知っていたからだ。江戸時代の人々は自然の作用を活用して夏を快適に過ごす術を心得ていた。京都の町家も坪庭に打ち水をして温度差で風を起こして部屋を涼しくしていた。

さて産総研は原発事故後2011年6月に「夏季における計画停電の影響と空調節電対策の効果を評価」という研究レポートを発表し、その中で「ビルエネルギー・排熱解析モデル」を図式化した。ビルを暑くする熱は外部性の①換気侵入熱、窓面透過日射熱、壁体貫流熱及び内部性の発熱などだが、これらの熱を冷却するために空調設備にかかる負荷は非常に大きく、電力需要のうち空調(エアコン)が3割を占めると予想している。当然空調の排熱は膨大な量になり、自動車排熱と併せて都市のヒートアイランド化の主な原因となっている。なおこの産総研のモデルではなぜか一日中日射熱に晒されるビルの屋上からの貫流熱は除外されている。今日も暑い一日で、できるだけ屋外に居ないように心がけた。東京電力の電力使用状況を見ると今日の午後5時半の使用状況は4236万KWで82%となっている。昨日の17時から今日の16時迄の使用電力のグラフを見ると、前日の17時から20時迄が高く、そこから下がり始め、今日の5時をボトムにして上昇に転じ、10時から14時迄高いレベルで推移している。このデータは産業と家庭を一緒にしているので、家庭について言えば午前10時ぐらいから夜寝るまでエアコンをフル稼働させている様子が窺える。以上より私が提案したいことは自然のメカニズムで、緑の力で都市を、東京を冷やす、ということである。ビルについて言えば屋上・屋根の緑化、壁面緑化、歩道の緑化、東京を緑溢れる街にする。太陽熱を、自動車の排熱を効率的に吸収し、都市の温度を下げる、そのような植物がないものだろうか。また緑溢れる街を支えるための灌水システムも必要になる。生物が安心してやってくることができるより自然に近い緑地。また照り返しの強いアスファルトに代わる冷却効果のある舗装材はないものだろうか。いうれ電気自動車が普及すれば、自動車の排熱は減少していくだろう。江戸時代の例に見ることができるように、日本人は自然に寄り添って、四季を生きてきた。温故知新の発想で、東京を世界のモデルになるような「クール&ナチュラル東京」に変えていきたいものだ。