ビジネスモデルあるところに志あり

ビジネスモデルはビジネスの新しい方法であり、従来のビジネスのパラダイム(枠組み)転換でもあります。言うまでもなく、ビジネスモデルの創造は簡単なことではありません。それは本来創造的活動なのです。そしてビジネスモデルは紙の上の案ではなく、現実の中で実践されて具体化され、進化していくものです。そこには様々な人間的努力、苦闘も伴います。
宅急便という卓越したビジネスモデルを創造したクロネコヤマトの小倉昌男氏のヴィジョンを描き、仮説を立て、検証していく経過を読みますと、大変な執念と忍耐と勇気を感じます。恐らく単なる金儲け意識だけでは困難な闘いを闘い抜くことは出来なかったのではないでしょうか。小倉氏は言います。「まず志を高く持ちなさい。また人間的にも優れていなければならない」単なるビジネスでの成功や金儲けではなく、高い志を持たなければならないということなのです。
今日では会社は社会のステークホルダーとして非常に重要な位置を占めています。会社は営利活動という利己的活動を基本にしていますが、一方で社会的存在であるという意識が強く求められているのです。
高度成長期には企業は環境汚染をしながら営利活動を行っていました。その結果、水俣をはじめとして多くの住民がその後環境汚染に苦しむこととなったことは皆さんご承知の通りです。今日では社会や人々に悪影響を与える企業活動、生産活動は厳しい批判の対象となることから逃れることはできません。
今日ビジネスモデルは企業の金儲けのためだけのモデルではありえなくなっているのです。社会生活の進歩にも役立つモデルであることが求められているのです。つまり利己だけではなく、利他、公共的な貢献が欠かせない、ということです。
従い今日のビジネスモデルのデザイナーはこのことをしっかり心に刻んでおかなければならないでしょう。
今日のような複雑で消費者のニーズが多様化している時代では、一企業だけでは顧客(個客)満足を実現することは困難になっています。換言すれは一個の企業のビジネスモデルだけでは限界が出てきます。そこで必要となってくるのは複数企業のビジネスモデルの組み合わせ、補完関係、共創的ありかたです。この組み合わせを一つ高いレベルに引き上げる力は、一言で表現すれば、社会性、つまり利他、公共的貢献の部分における共有意識と共同活動になるのではないでしょうか。その上でビジネスにおけるより高いレベルでの相乗効果も生まれてくるのではないかと期待されます。
最近私はビジネスモデルを考える時に、いつも2つの問いを自分に問いかけています。
このビジネスモデルは既存のビジネスのあり方をどのように、どこまで変えることが
できるか。もう一つの問いはこのビジネスモデルは社会に、世の中にどのように関わり、どのような貢献をすることができるのか。
ビジネスモデルデザイナーは常に問われる存在であり、苦闘の中で答えに迫り、また現実から迫られる存在であります。それだけやりがいのある、志をバネとした仕事なのだと言うことができないでしょうか。