利益モデルを考える

新橋にカウンター3席の寿司屋がある。
とても小さな寿司屋だ。
こんな規模でやっていけるのだろうかとつい思ってしまうが、テレビの取材によるとご主人は十分やっていけると答えていた。
そこで思わずテレビの前で膝を乗り出してしまった。
ご主人は以前20席ほどある寿司屋を経営していたが,悩みの種は仕込んだ材料のロスの大きさだった。
具体的には何%なのかの説明はなかったが、かなりの材料が無駄になっていたのではないか。
因みに回転寿司大手のスシローではロスは平均5%だそうだ。
このロスを減らすために「天才」というソフトを使ってお客の購買行動を分析して、投入する寿司の種類、数を決めているが、それだけではロスは下がらず、後は「達人」と呼ばれる店長が客席に出ていってお客の様子を見て最終判断し、1%以上下げている様子を1週間ほど前、これもやはりテレビでやっていた。
鮮度勝負の寿司の世界では材料のロスが利益構造を大きく左右するようだ。
新橋の小さな寿司屋のご主人は3席にしてからロスが無くなくなったと嬉しそうに(私にはそう見えた)話していた。
早朝築地に買出しに行き、選りすぐりの材料を仕入れても結局使わなかった材料はゴミ箱に捨てなければならない。
それが辛かったのではないか。
さらには材料の魚介類に申し訳ないという気持ちもあったのではないか。
勿論採算面での厳しさもあっただろう。
新橋の小さな寿司屋のご主人は願い通り、自分の寿司づくりの技をカウンターのお客の目の前で十二分に見て貰える充実感と喜びを感じているようだ。
そして何よりも選りすぐりの材料を使い切ることのできる幸せを感じているのではないか。
私たちは成長というと「小から大」を目指す。
その結果多くのロスが生まれ、経費も増えてくる。
見かけの利益が増えても実質的利益は細ってしまうことになりかねない。
また大きくなることによってお客様との距離も広がってしまう。
新橋の小さな寿司屋のご主人は世間の常識「小から大」とは真逆の「大から小」へのビジネスモデル転換の重要性を身を持って教えてくれている。
地球資源には限りがある。
特に食べ物はそうだ。
テレビを見ているとカウンター3席の寿司屋さんには行列が出来ている。
席が空いたらすぐ次の客が座る。
回転率も高そうだ。
腕が良さそうなので、機会を見て是非この寿司屋に行ってみたいと思っている。
やや高めの価格設定だが、それだけの価値があるのだろう。
ビジネスモデル的には大切な材料を捨てている辛さから洞察が生まれたのではないかと思う。
その洞察がいろいろな好循環を生み出している。
「大から小」へのビジネスモデル転換をはたした新橋の小さな寿司屋のご主人の勇気に学びたいと思う。
成功を祈りたい。